細谷 泰夫さん:アジャイル×テスト開発を考える
http://togetter.com/li/407192
http://yasuo.hatenablog.com/entry/2012/11/18/225159
アジャイル開発において成果物の品質を早期に確定させるためにどのようなテストを計画していくかについて発表されていました。2000年代からXPの推進者であった細谷さんが10年近くにわたって他部門の方(品質保証?)の方とアジャイル開発の導入について議論してきた経験が反映されている発表だという印象を受けました。
細谷さんによると、アジャイルに批判的な人の中には「品質の確定性」を気にしていて、「頻繁に変更が加わって品質が安定しなさそう」と言う方がいるのだそう。おそらくは、頭の中に理想的なフォーターフォール(つまり目標の品質に対して直線的に向かっている状況)を思い描き、それと対比して、頻繁にリリースをしながら徐々に目標の品質に向かうアジャイルに対してネガティブな印象を持っているのではないか?という話です。
しかし、細谷さんはプロセスの違いが問題ではなく、
- 利害関係者の間でどうやって目標の品質を共有するのか?
- その目標の品質をどうやって達成するのか?
前者については、コンテキストに依存するので計画の段階で合意する必要があるようです。後者については、アジャイル開発をやると早期に開発とテストが協調し始めて、テストコミュニティでよく話題に挙がる「Wモデル」と同じ効果が得られるのだそうです。このWモデルとは、V字モデルの左側(要求分析・基本設計・詳細設計・実装)と並行してテスト設計を始める手法です。
そして、早期に開発とテストを協調させる上で重要になるのが「テスト計画」のようです。テスト計画としては以下を考えるとよさそうです。
- いつ、どんな品質を確定させたいか?
- 複数のテストの粒度をどう組み合わせるか?(ユニット、インテグレーション、受け入れ、etc)
- どう自動化するか?
- 誰からどのようにフィードバックを受けるか?
前川 直也 さん: 家電商品を開発してみると目からウロコなAgileの本質
http://togetter.com/li/407795本職は家電メーカーのPMである前川さんが、大規模開発でアジャイル開発を実践する上での体験を話されていました。昨今のニュースで見聞きしているのと同じで、やはり家電開発はかなりしんどい状況におかれているようです。かなり際どい話だったので資料は非公開のようです^^;
円高、新興国メーカーの台頭、消費者の趣向の変化など社会が急速に変わっていく中で、市場に受け入れてもらって、企業が生き残っていくには、どの分野でどういう価値を提供して利益を得ていくかはかなり深刻な問題です。昨今のニュースを見る限りでは、次から次へと起こる変化に対応していくうちに、開発規模は膨れ上がり、他社との価格競争は激化し、疲弊していっているのが現状だと思います。
先日の主要エレクトロニクス企業の決算を見る限りでは、もはや一度敗北してしまって、今焼け野原の中にたっているということを認めてしまった方が良いのかもしれません。そこから、もう一度、我々の事業は何なのか?を見つめなおして再スタートを切るべきなのかも。これは家電企業だけの話をしているわけではなく、私のいるSI業界も似た状況に立たされると思っています。
そこで、前川さんが話していたアジャイルの本質(おそらくは「現場、人、お客さんの価値提供を重視すること」だと思います)の重要性が増してきているのだと思います。そして、前川さん自身は主要エレクトリにクス企業の創業者の格言の中にアジャイルの本質を再発見しているそうです。戦後の焼け野原の中でエレクトロニクス企業が次々と立ち上がったように我々も立ち上がる時期がきています。
たぶん、SI業界もタイミングが少し遅れてきっつい状況が来るのだと思うので、今から準備しておくと良いでしょうね。
原田 騎郎 さん:Can you keep doing that? <No-Bull Know-How>
こちらは講演はなしです。「No-Bull Know-How」というのはAgile 2012などでも実践されているセッションのスタイルの一つだそうです。有識者が一人壇上に上がり、聴講者が質問を投げかけ、それに対して有識者がアドバイスします。そのアドバイスを聞いた他の聴講者がアドバイスが妥当かどうかを判断するというものです。
@daipresentsさんのブログにも紹介されているのでぜひ読んでみて下さい。
Agile 2012「No-Bull Know-How Stage」はアジャイル著名人とディスカッションできるステージ
私自身は個々の質問が、というより、このスタイルに興味を持ちました。一般的に、日本で講演スタイルを取ると講演者が質問して、残り数分で質問の時間に入りますが、あまり質問できずに終わることが多いと思います。そして、スキマ時間に1対1で質問する人も多いと思います。
しかし、もっと講演者と聴講者が対話的になることで生まれる価値みたいなものもあるのでは?と思います。あるいは、「あ、○○さんいた。○○さんの方が詳しいからちょっと話してよ。」みたいな無茶ぶりすることで、別の視点が引き出せたり。指名された人はえーって驚きそうですが。
これまで、このスタイルはあまり一般的ではなかったですが、イベントでこういう対話的なセッションが増えてもいいなと思っています。
井芹 洋輝 さん:テストを支える。テストを育てる。
Test Driven Development for Embedded C読書会でご一緒した井芹さんの発表です。発表の内容は、現状のテストで起きる問題を「テストを育てる・支える」という視点で解決しようというものです。問題というのは以下のようなもの。
- テストの保守性が低くて、変更の度に生産性が下がる。
- テストの要求を見逃してしまったり、目的が異なるテスト同士が阻害しあったりする。
- テスト全体として整合性がとれておらず、穴があったり冗長だったりする。
それに対する解決作は資料で詳しく解説されているので、そちらを参照していただきたいと思います^^; かなり情報量が多くて理解しきれていません。。
「育てる」の方は、ソフトウェア開発における要求分析やアーキテクチャ設計でよく言われるような話をテスト全体に適用しているような印象を受けました。
「支える」の方は、検討したテストが破綻しないように効率化したり、保守性を向上したりする話だと思います。一旦、作り上げた後もメンテナンスが走るのは世の常なのでどうフォローするかも重要な視点だと思います。
特に「育てる」の方で挙がってたテストの全体の計画については自分が計画する役割ではなかったとしても、その視点は持っていた方が良いと思うので、たびたび引用されていた「ソフトウェア・テスト PRESS 総集編
」は購入して読んでみようと思います。
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