2011/05/09

@mas0061 さんのETロボコンモデル記事に対するコメントへ回答

@mas0061 さんがETロボコンの記事についてblogでコメントしてくださったので、さらに疑問点について回答します。

■UMLだからこそ取れるモデル間のトレーサビリティって何だろう?

これは「2.2 モデルの読みやすさを意識してトレーサビリティを向上させた」にある以下の発言を指してのコメントだと思います。
林田:でも、実際にモデルを作って社内レビューをすると、トレーサビリティがあるモデル、つまり複数のモデルの内容が一貫している方が自分達が理解しやすいし、レビュアにも理解してもらいやすいですよね。やはり、ここはUMLを使うことの強みをより生かせるところやと思いますよ。
ここでは大層なことを言っていたわけではなく、モデル審査基準にある通り、構造モデルと振る舞いモデルの要素が対応しているなどの基礎的なことだと思います。UMLの場合、文法で対応関係が定義されている便利さはあると思います。

一方で、「2.3 複数のダイアグラムを読みやすくする工夫を施した」に書いてあるような分類の粒度を揃えたり、情報を整理してトレーサビリティを取ることはモデラ自身がちゃんと考えないといけないと思います。

後者のは文法を守っていればOKという話ではないので、かなり難しいです。ある程度のトレーニングを受けたり、本業で経験を積まないと難しい類の作業だと思いました。
この点、私はへっぽこですが、本業がモデリングの講師であるメンバーと一緒に作業出来た点は恵まれているなと思いました。

■読みやすい=ストーリー性があるってことかな

人によって読みやすさは主観的に決まると思うし、色々な要素が組み合わさって決まることなので、何とも言えません。

2010年のモデルでは、ストーリー展開(概略から詳細へ、全体像から部分へ、結論から理由へ)だけでなく、分析の粒度や切り口にもこだわっています(「2.3 複数のダイアグラムを読みやすくする工夫を施した」を参照)。

■対象ドメインが徹底的に分析されていて、それを審査員の立場でどう表現するかが、戦略的に練られてる

読み手の立場は意識していますが、表現する際に審査員の立場になることはないんじゃないでしょうか?

対象ドメインの分析については、2011年は競技規約が大きく変わっているので、ドメイン分析がより重要になると思います。

記事でも言及しているように、2010年から競技規約が変わった部分が適切にモデルに反映されていると評価は高いと思います。ただし、競技内の本質的な部分は変わっていないので、クラス図を大きく変えるところ、変えないところは出てくるかもしれません。

■UMLの基本に忠実に、かつ適切な図の選択をすることが重要

目的に応じた適切なダイアグラムを使うことは大事だと思います。

■要求図は、要求と機能と制約の関係が1つの図で示せる反面、ゴチャゴチャしがちな印象だけど、ここに対する審査員の評価ってどうなんだろう?
→コメントなかったんだ…

記事では「評価されていない」と書いているので、誤解を与えたかもしれませんが、個人的にはコメントの有無や量は評価と直接は関係ないと思います。コメントをたくさんつけていることは、審査員の関心が高いので評価も高い可能生がありますが、コメントがなかったからといって全く評価されていないわけでもないと思います。

この辺は、審査員に聞かないと分からないので、ワークショップや懇親会で聞いた方がいいでしょう。

■これだけのモデルが、どの段階でできあがったか?に興味がある。開発段階で基礎的な部分はできあがってて、それをモデリングシート用に見た目を変えたのか、開発がほぼ終わってから説明のためにできあがったのか

UMLで描いている部分の原形は6月くらいにでき上がっています。ただ、モデルシートを作成する段階で、モデルをより分かりやすく、納得性を高めるために、見た目だけでなく中身をいじっています。
(例)ユースケースの粒度、開発で得た知識を要求図の内容に反映、クラス図の属性の配置やクラス間の責務の再配置、etc.

正直なところだと、モデルの完成度を上げたのは提出直前の追い込みだと思います。

■去年も要求図を良く見たけど、今年は定着フェーズになりそう。だって、この記事見てると、要求図でモデル書きたくなるw

田町レーシングが描いているやり方以上に、もっとうれしさや良さがはっきり分かるような手法を開発してくれるとうれしいなと思います。